水族館の影の力持ち「水」!何千、何万トンもの水が生き物の命を支えています。では一体水族館は水をどのように調達しているのでしょう。あれだけ大量の水ですから水道から調達できるはずはありません!
また常に一定の水質を維持するためには、定期的な水の交換が必要不可欠です。みなさんも「水の交換をしているのかな?」と一度は疑問に感じたことがあるはずです。
そこで水族館の水の調達方法や交換、管理方法について詳しくお話しさせていただきます。
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水族館の水の管理事情!人工海水があるって本当?
簡潔に答えると水族館により管理事情は4つの方法に分けられます。
1、海からポンプでダイレクトに組水
2、海から組水→専用運搬車→ろか
3、川や湖から汲み取りダイレクトに利用(淡水魚専門水族館)
4、人口海水でリサイクル(都市型水族館)
そこでより詳しくその仕組みについて見ていきましょう!
水族館は海辺や川辺の近くにありますね。これは人件費や輸送費などのコストを掛けずに、手っ取り早く水を入手するためです。海辺にある水族館の大半は導水管を海底に設置し、必要な量の水を汲み取っています。
汲み取った水をそのまま利用する水族館もあります。入場者数1位の「ちゅら美水族館」(沖縄)、「鳥羽水族館」など昔からある水族館は一般的にこの方法です。
一方で海水運搬車で水を運び、貯水槽に一度溜めて濾過し一定基準の水質に保った上で利用する水族館もあります。「仙台うみの杜水族館」はこの方法です。
さらに川辺や湖の近くには淡水魚専門の水族館がありますね。こちらは近くの川や湖の淡水をポンプで汲み上げ、そのまま活用しています。
しかし海水の塩分濃度や魚の種類により、生息する環境は違うはずです。そのようなケースでは専用の海水運搬船により海水を運びます。海遊館(大阪府)が有名です。コストと時間がかかるだけに避けたい方法ですが、水族館を維持するためには仕方ありません。
また最新テクノロジー化により、ここ数年間に水族館の水事情が変化しています。淡水に一定量の塩とミネラルをプラスした人工海水が完成したからです。
人工海水を利用すると運搬の手間がかかりません。都市内陸部に位置する水族館が水を入手しやすいですね。都内にある「すみだ水族館」や「京都水族館」が人工海水を活用していることで知られています。
ただし人工海水は運搬費や時間を削減できますが、維持のために莫大な費用がかかるデメリットも!どちらの水族館も観光地にあり、一定した収入を望めるからこそできる仕組みです。
海水運搬船「かいゆう」。海遊館に、高知沖の海水を運んでくる船。
こころ、わくわく、大阪港ヽ(*´▽)ノ♪#大阪港は来年開港150年 pic.twitter.com/obxQH1ZS8m
— 高橋英樹 (@Hideki918) August 13, 2016
水族館の水は定期的に取り替えるの?
水族館では魚たちが快適に過ごし、私たちがきれいな水質で生き物を観察できるように定期的に水の総入れ替えを行なっています。魚たちを全部移動させ、水を抜き水槽を洗らうため大掛かりな作業です。
この一連の作業を「落水作業」と呼んでいます。サンシャイン水族館は落水作業の様子を一般公開しています。スケジュールが合う方は貴重な清掃の様子をぜひ観察してみましょう。
さらにイルカやアザラシ、ラッコなどの哺乳類の水槽は屋外に設置されるケースが多く、汚れやすいです。そのため2〜3週間に1度のペースで総入れ替えを行なっています。
「水槽ピカピカ大作戦!」水族館の水槽の掃除を見学してみませんか?#サンシャイン水族館 #水槽清掃見学 #水槽ピカピカ大作戦 #水族館水槽掃除 #サンシャイン水族館イベント #落水清掃https://t.co/MGQiJdz1C5 pic.twitter.com/ZcV1J5uMhg
— odekake_nakasho (@ONakasho) November 11, 2018
水族館で使用後の水処理はどうするの?
入れ換え後に使用済みの水はろ過装置で不純物を除去し、再び有効活用されます。利用後の水は魚たちの排泄物やエサなどで汚濁しています。
これらを砂やバクテリアを使い除去、分解し一定の水質にした後、水族館の水として再利用するのです。その際には魚たちが生育しやすいように温度や塩分濃度を人工的に調節しています。
水族館で一番びっくりした事
ろ過装置 pic.twitter.com/6M5TLQ459g
— しゅう (@syu_chan_1005) June 10, 2017
水族館の水はどのくらいの期間で入れ替えるの?
毎日魚たちは餌を食べ排泄をしながら生活しており、当然水質が悪くなります。不衛生な状態にしておくと、病気が発生し最悪なケースでは伝染病による集団死の原因となるのです。
そのため水族館では毎日一定の量の水を入れ換えています。1日のうちに行う入れ替えの頻度は各水槽により違います。例えば沖縄のちゅ美水族館にあるジンベイザメの水槽では1日に12回も行うのです。一方で黒潮の海では1日当たり4回行なっています。
飼育する生き物の種類や水質環境により、水の管理が大きく違うのです。
水だけしかない水槽を展示している水族館がある?
一般的に水族館の水槽には各種生き物が生息していますね。しかし「いおワールドかごしま水族館」には『沈黙の海』と名付けられた、水だけ展示している珍しい水槽があるのです。
人によっては「不吉」と感じます。たしかに生き物のいない海は不気味ですね。しかし環境汚染による水質破壊により、海中の生物たちは確実に減少し続けています。
『沈黙の海』は、資源のありがたさや着実に進んでいる環境汚染について考える良いきっかけとなるはずです。
おまけ@鹿児島水族館
何も展示してない水槽「沈黙の海」。滅びた海を表現しています。順路の一番最後にこれを持ってくるセンスに脱帽。#鹿児島水族館 #沈黙の海 pic.twitter.com/jMsOvXA2Ot— KayTa (@Macbeth_KohBoh) May 3, 2018
まとめ
水族館のバックヤードでは資源を有効に活用しつつ、コストをできるだけカットして水を管理しています。立地条件により水を調達する方法が異なりますし、水質を維持するために日々入れ替えを行なっているのです。
多くのスタッフが水族館を陰ながらサポートしていることが伝わって来ます。時には視点を変えて水族館の水という観点から水族館を観察しましょう!